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ぺたぺた




今から数年前の夏のころ。
夜遅くに友人から麻雀の誘いがあった。
週末これといった予定もなかったので、出かけることにした。
終電で辿り着いた友人宅は、世田谷の奥まった場所にある。
寝静まった住宅地は昼間の記憶を危うくし、道に迷ったことに気が付いた。
暗い夜道を行きつ戻りつしながら、公団住宅らしき場所で立ち止まった。
宅地地図の表示板の前であたりを見回すと、何気に視線が建物にいく。
外階段の踊り場だろうか、人影があった。

暗くて男女の区別はつかないが、五階の窓台に両肘を乗せ、下を覗き込んでいる。
誰かに道を尋ねたいという気持ちはあった。
声をかけるには離れすぎている。というか、背中に悪寒が走っていた。
「あれは違う」と感じた瞬間、その人影がすっとこちらに顔を向けた。
そして、まるでこちらを確認したかのように、ふっと姿を消した。
階段を下りるぺたぺたという音がコンクリートに反響する。
それを聞いて慌てて走り出した。
 なぜ逃げるのか、どうして追われるのか、その時は何も考えられなかった。
ぺたぺたという足音が、一定のリズムでこちらに迫っていた。
五分ほど走って、狭い道からようやく広い通りに出る。
肩で息をしながら、額の汗をぬぐうと、行き交う車の音で足音は聞こえなくなっていた。
人心地ついて、友人に携帯で電話する。
「そんな団地みたいな建物ないぞ」
携帯で誘導してもらいながら、今しがたの出来事を話すと、友人はそういった。
「いや、学校の敷地を通り過ぎたあたり」
そこまで話すと、電話が不通になった。
「圏外?」パネルのマークを見ながらつぶやく。
 あたりは思いのほか静寂に包まれていた。
そして、あのぺたぺたという足音が聞こえてきてた。
今度は立ち止まって、その足音の主を確かめようと思った。
外灯の下に立ち、身構えると、全身に震えがきた。
 なぜたか分からない。そんな体験は初めてだった。
足音は消えて、何かの気配があった。

 結局、負け犬のようにびくびくしながら道を引き返した。
友人の誘いを無視して、自宅に帰った。
 世田谷で起きた幾つかの未解決事件。何の根拠もないのだが、個人的に気になる
今日この頃だ。



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2018-08-24 18:35 : 怖話 : コメント : 0 :
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